「千歳、先に行け」
「わかった」
もたもたしている暇はない。
千歳は言われるがままに窓枠に足をかけた。

生徒たちが殺到してこない内に外へ出ないと、大変なことになる。
しかし、そう簡単にはいかなかった。

先に外に出た男子生徒の声が途絶えたことに気が付き、千歳は異変に気がついたのだ。
いつの間にか男子生徒の姿が見えなくなっている。
ついさっきまでそこにいたのに、どこへ行ったの?
動きを止めて外を確認している間にも、沢山の生徒たちが他の窓から外へ飛び出していく。

「千歳早くしろ!」
怒鳴る明宏に千歳の胸には嫌な予感が膨らんでいく。
千歳は左右に首を振って窓枠から足をおろし、そして窓を閉めたのだ。
「おい、なにして-―!」

明宏が怒鳴るスキもなく、窓にさっきの男子生徒が張り付いていた。
両手でバンッと窓を叩く。