もう決めていたことみたいだ。
「それって大丈夫なの? 村上くんが逃げる時間はある?」

「……わからない」
「そんな」
「俺なら大丈夫。心残りはもうない」

千歳の言葉を遮るように村上は言った。
そして微笑むと千歳の耳に顔を寄せた。

「ずっとキスしたかったんだ。させてくれてありがとう」
絶句している千歳を残して村上はゾンビたちを避けながら走っていってしまったのだった。

「あいつ、なんだって?」
「……なんでもない」
千歳は左右に首を振ってそう答えたのだった。