この時ふたりはクラスが違って、互いに認識したのはこれが初めてのことだった。
明宏は苦笑いを浮かべて大丈夫だと答えたが、千歳は面白半分で明宏に合わせて歩き始めた。

毎日勉強道具を置いて帰っていたこと。
学年が変わるから、それを全部持って帰らないといけなくなったことを説明すると、千歳は声を出して笑った。

『普通、少しずつ持って帰るよね? そうしなかったの?』
『忘れてただよ』

明宏は笑われたことに苦笑いを作って答える。
それから2年生に上がって同じクラスになったとき、自然と距離は近くなった。

明宏から告白されたときだって、千歳は驚かなかったくらいだ。
「どうして村上について行かなかったんだ?」

「どうしてって……」
そんなの、ほっとけなかったからに決まってる。
「村上の方がずっと良かったかもしれないだろ」

「もしかして村上くんの気持ちを知ってたの?」
聞くと明宏は頷いた。