「一ヶ月前。放課後に図書館で調べ物をしてたら、偶然若葉と会ったんだ。クラスメートだし、ちょっとした談笑をしてた。そのとき若葉も同じ調べ物をしてたから、それなら一緒に勉強しようってことになったんだ」

話を聞きながら千歳はひと月前のことを思い出していた。
確かその頃宿題で地域の伝承を調べるように言われたんだった。

それで千歳は市立図書館へ向かったけれど、明宏と若葉は学校の図書室を選んだみたいだ。
そこですっかり意気投合して、なんとなく気になりはじめたらしい。

話を聞き終えた千歳はゆるゆるとため息を吐き出した。
どんなことでも、始まりは本当に些細なことだらけだ。

「私と付き合いだしたキッカケもそんな風だったよね」
「あぁ、そうだったな」
千歳と明宏がつきあい始めたのは1年生の終わりころだった。

普段から勉強道具を学校に置きっぱなしにしていた明宏は、カバンの中をパンパンにして帰ることになってしまった。
荷物の重さにひぃひぃ言いながら廊下を歩いていたときに声をかけたのが千歳だった。

『大丈夫?』
あまりにも重たそうなカバンに、つい声をかけた。