「だから、あいつの元には行かせない」
村上の手が強く千歳の手を掴む。

絶対に離さないという強い意思を感じるのは、きっと千歳の勘違いではない。
「千歳が生きてるってわかってとき、本当に嬉しかった。爆弾だってもうすぐ完成する。予定通りふたりで逃げよう」

きっと、その方がいいんだろう。
村上と一緒にいた方が助かる可能性は高いかもしれない。

でも……。
廊下から聞こえてくる明宏の悲鳴を無視し続けることはできなかった。
千歳は下唇をかみしめてうつむく。