千歳は焦ってドアの鍵を開けようとする。
けれど村上がその手を掴んで止めた。

「ダメだ。これ以上人数は増やさない」
「なんで!? 早く助けなきゃ明宏が感染しちゃう!」

こうしている間にも廊下からは明宏の悲鳴と、バーナーを噴射する音が聞こえてきている。
必死に戦っている。

「あいつはゾンビを引き連れてる。入れるわけにはいかない」
「若葉は入れない、明宏を助けるだけだから!」
「ダメだ」

「どうして……!」
混乱する千歳の唇に村上の唇が押し当てられていた。
驚き、目を見開いたまま抵抗もできずに棒立ちになる。

「俺、ずっと千歳のこと……」
そこまで言って顔を伏せる村上。

まさか村上が自分のことを?
全く気が付かなかった気持ちに混乱は増していく。