それに気がついた千歳がすぐに駆け寄ってきた。
「明宏!?」
「千歳……」
ふたりは一瞬だけ目を合わせて呆然とした。

だけど後ろからは若葉が迫ってきている。
会話を交わす時間はなかった。

「ダメだ。お前は入れられない」
村上が冷たい目で明宏を見る。

「どうして!?」
「ゾンビがついて来てる」
村上の言葉に振り向く暇もなく、若葉が後ろから両手を伸ばす。

その両手は明宏の肩を掴んで引き寄せた。
「うわっ!」
明宏がドアから離れた瞬間、村上はドアを閉めて鍵をかけた。

「なんでそんなことするの!? 明宏を助けなきゃ!」
モタモタしなければ明宏を化学室へ引き入れることができたはずだ。