戸もかすかに揺れている。
これは開かない戸を開けようとしているときとよく似ていた。

「でもゾンビはそこまで賢くないはずじゃ……」
そこまで言って口を閉じた。

今までだって、こちらの攻撃をかわしたり、武器を手にした可能性があるゾンビたちに出会っている。

ドアを開けるという行為をするゾンビがいても不思議じゃないかもしれない。
「ゾンビだっていつまでもバカじゃないってことだ」

「ここにいられる時間も限られてるってことだよね? 早く脱出しなきゃ、ゾンビたちが強くなっていく」

村上が頷く。
再び爆弾作りを再開して1時間ほどが経過したとき、廊下が騒がしくなってきた。

ドタドタと走る足音が聞こえてくる。
それは明らかに生きた人間のもので、ふたりは目を見交わせた。
「もしかしたら田中が戻ってきたのかもしれない」

村上の声に期待が交じる。