確かに、顔の筋肉がこわばっていたかも知れない。
黙っているとつい明宏のことを思い出してしまうからだ。

千歳は左右に首を振って「本当だね」と呟いた。
気がつけば窓の外はオレンジ色になりはじめて、もうすぐまた夜が来そうだ。

「それに、なんだかさっきから不穏なんだ」
「なにが?」

聞くと村上は教室前方のドアへ視線を向ける。
廊下にゾンビがいるようで、ガタガタと音が鳴っている。

「ゾンビがドアにぶつかってきてるんじゃない?」
「ぶつかってきてるなら、もっと音が大きいんだ。ガンガン響く。それにしては音が小さい」

「どういうこと?」
「多分だけど、ゾンビはドアを開けようとしてるんじゃないか」
村上の言葉に千歳は小さく口を開いたまま固まってしまった。
そう言われれば音は小さく、ガタガタと小刻みだ。