田中が千歳の体を押して前へ出る。
「純くん? 私どうして?」

困惑した声を上げる。
その声もとても可愛い。
「説明は後だ。すぐに解いてやるからな」

田中がロープを外し始めるのを見て千歳は思わず「ダメ!」と、声を上げていた。
だけど田中は手を止めない。
ロープはあっという間に解けてしまった。

「またゾンビかするのに!」
「黙れ!! 真那はもうゾンビにはらない。俺がさせない」

田中の目には強い意思が宿っている。
けれどその意思を貫くことができるかどうかは、誰にもわからないことだった。

田中は真那の手を引くとそのまま教室を出ていこうとした。
「どこに行くんだ?」

村上の声に一旦立ち止まり、振り返る。
「俺は真那とふたりで行く」
田中はそれだけ言うと、教室を出ていってしまったのだった。