口を大きく開いて犬歯をのぞかせている。
「本気でキスするのか?」
村上は不安そうだ。

少なくても今はやめておいたほうが良さそうだ。
ゾンビ化した彼女の気が立っている。
「当たり前だぞ、真那は俺の彼女だ!」

「だけど噛まれるぞ!?」
村上からの忠告にさすがに田中もひるんだ様子だ。
しばらく彼女の様子を見ていたが、小さく舌打ちをして自分も椅子に座った。

よかった。
ひとまずは思いとどまってくれたみたいだ。
千歳が安堵したのもつかの間だった。

ふと思いついたように田中の視線が千歳へ向いたのだ。
「そうだ、お前が真那にキスしろよ」
「えっ」