彼女はうーうーと唸り声を上げて、口の端からよだれを垂らしている。
「人間に戻るのは少しの間だけだよ? またゾンビになる」

「それなら、ソンビになる前にまたキスすりゃいいだろ?」
田中の言葉に千歳は眉を寄せた。
そうだろうか?

ゾンビニなる前にキスをすれば、人間でいられる時間が伸びるなんてそんな保証はどこにもない。
だけど田中はそう信じて疑わないようだ。

彼女の口に噛ませていた布を引っ張り出した。
途端に彼女の唸り声が大きくなる。
ずっと拘束されていたことが原因なのか、目を釣り上げて起こっているように見えた。