そのときの光景を思い出して下唇を噛みしめる。
心の中に重たい澱が溜まっていくようだ。
「友達を治しただけなんじゃないのか?」

「治してもまたゾンビになる。それにあの感じはそんなんじゃなかった」
うまく言葉にして説明することができない。
だけど千歳の説明に田中は何度も頷いた。

「わかる。あのふたり元々距離が近かったよな。妙だなと思ったことは何度かある」
その言葉に千歳はうつむいた。

やっぱり他の生徒から見てもあのふたりの関係は普通の友達以上に見えていたみたいだ。
「マジかよ、全然気が付かなかった」
村上は驚いた表情で千歳を見つめる。

「そんなんで我慢してたのか?」
「だって……」

村上に聞かれても返事ができなかった。
だって、ずっと明宏のことが好きだった。