「保健室にまだ何人かいる」
「本当か? それはすげぇな」

村上の鋭いツリ目が細められる。
「うん。育美もいる」

そう言うとふたりは低く声を出して笑った。
「育美は死んでも死なないから心配してねぇよ」

「だな」
ふたりのやり取りに千歳もだんだんと落ち着いてきた。
普段はあまり会話をしないタイプのふたりだけれど、こうしてクラスメートに会えたことはやっぱり嬉しい。

化学室の中を見回してみると、教室の奥には机でバリケードが作られていた。
「あれはゾンビが入ってきたときに隠れるための場所だ。まぁ、隠れるまでもないけどな」

田中はそう言うと床に置いてあった木製のバッドを振り回して見せた。
バッドはすでに血で汚れている。

「かなりの数を倒したの?」
「20体か、30体くらいか?」
村上が首を傾げながら答えた。