素敵な彼氏だと思っていた。
それなのに、裏切られていたなんて!
「ここからは私は1人で行動する。ふたりは好きにすれば?」

千歳はそう言い放って階段を上がり始めた。
とてもじゃないけれど、今の感情のまま保健室へ戻ることはできない。
それない、若葉がいつゾンビに戻るかもわからないんだ。

「待てよ千歳! 1人は危険だ!」
明宏が下から声をかけてくる。

立ち止まって振り向くと、明宏の隣には勝誇った顔で微笑む若葉が立っていた。
その手は明宏の手を握りしめている。
明宏は千歳を止めてくれた。

だけど、若葉の手を振り払ってまでは追いかけてこない。
それが答えだ。
すべての答えだ。

千歳は唇をきつく噛み締めて涙が溢れてくるのをどうにか抑え込んだ。
そして明宏へはなんの返事もせずに、階段を上がり始めたのだった。