千歳は明宏の手を掴んで強引に歩き出そうとする。
けれど明宏はその場から動かなかった。
「待てよ。行くなら若葉も一緒だ」

「ダメだよ。一時的に人間になってるだけで、いつゾンビに戻るかわからないんだから」

混乱している様子の若葉の前で千歳は容赦なく吐き捨てる。
そんな千歳に対して明宏は顔をしかめた。
「置いていくなんてできない。若葉は人間だ」

「それは今明宏がキスをしたからでしょ!?」
キスしなければ若葉はゾンビのままだった。
保健室に連れて行くことなんて、考えなかったはずだ。

「明宏がキスしてくれたの?」
若葉の問いかけに明宏が微笑む。

「そうだよ。人間に戻ってよかった」
明宏も微笑む。
ふたりの雰囲気は普通のクラスメート以上のものを感じた。