やがて若葉はキョトンとした表情になり、「私、なにしてたの?」と、聞いてきた。
それを見た明宏が泣き笑いの表情を浮かべて若葉を抱きしめる。

「さっきは攻撃してごめん。こうしてキスすればよかったのに」
ささやくそうな声は、まるで恋人へ向けた言葉みたいだ。

千歳は階段を駆け下りてふたりに近づいた。
若葉は自分がソンビ化していたときのことを覚えていないようで、しきりに首を傾げている。

「若葉はゾンビになったんだよ」
千歳の容赦ない言葉に若葉が動揺する。
「私が?」

「やめよろ千歳。若葉は覚えてないんだ」
「覚えてないから教えてあげたの」
千歳は明宏を突き放すように答える。

さっきのキスに特別な意味が込められていたようにしか感じられなくて、いらだちが募る。
「早く保健室へ戻ろう」