階段の一番下に若葉の姿があったのだ。
さっき受けた攻撃が生々しく残っていて明宏は足を止めた。

若葉がジッとこちらを見上げてきている。
その目は灰色に濁って、なにも見えていないみたいだ。

「若葉……」
後ろにいた千歳も気がついた。
若葉以外のゾンビたちの姿が見えない。

それなら若葉をバーナーで撃退すればいいだけだ。
だけど明宏の足は前に進まなかった。
ジッと若葉を見つめている。

「どうしたの明宏?」
異変に気がついた千歳が声をかけてくる。

それでも返事ができない。
若葉がその場でゆらゆらと揺れて立っている。
明宏はなにかを決意したように動き出した。