体育教師はあっという間に距離を詰めて、両手を伸ばしてきた。
その両腕も力こぶが出ている。

「なんだよ。なんでこんなに素早いんだ」
攻撃しながら明宏が青ざめる。
人間だったころの名残だろうか、体育教師の様子は他のゾンビたちとは明らかに違った。

明宏がモップを振り回しても、それを片手であしらっている。
「攻撃がきかない!」
明宏の言葉に千歳もモップを握りしめた。

そして机を回り込むようにして体育教師の背中へ回り込む。
体育教師は目の前にいる明宏に夢中でそれに気が付かなかった。

体育教師の頭部へ向けて千歳は思いっきりモップを振り下ろした。
たしかな手応えがある。
モップが歪んでしまったが、構わずに2度めを振り下ろした。

体育教師が怯んだすきに前方から明宏が攻撃する。
それでも体育教師は簡単には倒れなかった。
他のゾンビたちみたいに床に突っ伏すことがない。