「き、救急車は呼んであるんだよね?」
「あぁ。でもなかなか来なくて」
明宏が落ち着かない様子で廊下の窓から、教室内の時計を確認する。

もう随分時間が経っているような気がしていたけれど、まだ5分も経っていないことがわかった。
救急車が到着するまでにはもう少し時間がかかるだろう。

明宏が再び先生と倒れている女子生徒へ視線を戻す。
と、そのときだった。
今までピクリとも動かなかった女子生徒が突然上半身を起こしたのだ。

先生は絶句し、それから「だ、大丈夫なの?」と、声をかける。
女子生徒は無言で先生を見つめるが、その目は灰色に濁っていてどこを見ているのかわからない。
「まだ動かないでね、すぐに救急車が来るから」

先生が再び女子生徒を横にならせるため、両手で肩を掴む。