そこには大きな鏡が取り付けられていて、千歳には一瞬女性の顔が見えた気がした。
でもそれはただの気のせいだ。
階段には今自分たちふたりしかいないと思い直す。

「よし、大丈夫そうだな」
次の階段を確認して明宏が足をすすめる。
一番上の段までやってきたとき、ふいに左右から同時にゾンビ化した生徒たちが出現した。

咄嗟のことで千歳が短い悲鳴を上げる。
その声を聞きつけて他のゾンビたちが一斉に近づいてきた。
「くそっ」

明宏がモップを振り回す。
千歳も明宏の手を離して両手でモップを振り回した。
時折手応えがあり、ゾンビたちがひるんでいく。

しかし1体のゾンビが明宏の両肩を掴んだ。
「明宏!」
そのまま噛まれそうになった瞬間、明宏はゾンビの腰を掴んで引き寄せた。