モップを握りしめて保健室から出るとまず2体のゾンビを見つけた。
1体は若葉だ。

ずっかり以前の見た目を失ってしまった若葉に千歳の胸は痛くなる。
ゾンビに襲われると、どれだけキレイな人も容易く人ではなくなってしまう。

「ここは走り抜けよう」
明宏が千歳の手を握りしめて言う。

「うん」
力強く頷くと同時にふたりは駆け出した。

2体のゾンビの真ん中を走り抜ける。
ゾンビたちはふたりに両手を伸ばしてきたけど、掴まれること無く突破できた。

そのまま足を止めずに階段へ向かう。
途中でまた1体のゾンビがいたけれど、明宏が片手でモップを振り回して近づかせなかった。

1度足を緩めて階段を確認すると、幸いそこにゾンビたちの姿はなかった。
もしかしたら階段の上り下りができないのかもしれない。
ふたりで一気に階段をかけあがって踊り場で立ち止まる。