保健室には3床のベッドがあるから、横になって休むことができる。
ずっと床で寝ていた千歳たちには嬉しいことだった。

「若葉……若葉……」
うわ言のように繰り返してしゃくりあげる青葉。
外にでることを計画したのは時期尚早だったのかもしれない。

千歳は青葉に布団をかけてやりながらそう考えた。
もう少し外の様子を確認して、薬ができるのを待てばよかったのかも。

「なにか手はないのか。キスをする以外に、元に戻す方法は」
明宏が保健室の中をうろうろと歩き回りながらネットで情報を収集している。

しかし思い通りの記事が見つからないのか何度も舌打ちを繰り返した。
「このままじゃ外にも出られない」
育美が避難するような声でつぶやく。

その視線は明宏へ向けられていた。
「なんだよ、俺のせいか?」
「少なくても廊下へ出なければ若葉は感染しなかったかもね」