何、今の?
私はなにを見たの?
頭の中でグルグルと疑問が浮かんでくる。

自分が今見た出来事が現実のものだなんて信じられない。
トイレから出て口を濯いでいる間にも、心臓がバクバクと破裂しそうなほど動いているのがわかる。

「千歳、大丈夫か?」
ドアの外から聞こえた明宏の声に少しだけ落ち着くと、千歳は口元をハンカチで拭って廊下へ出た。

そこはすでにパニック状態で、沢山の生徒たちが教室から出てきていた。
「どうなったの?」

「他の先生が来たんだけど、その前に教室から逃げ出して行った」
「じゃあ、今どこにいるかわからないの?」