その服はスーツだ。
学校の先生なのか、迷い込んできたサラリーマンなのか、ただれた顔では判断がつかなかった。

しかしそのゾンビは突然窓枠に手をかけたのだ。
不意に人間だった頃の行動を思い出したかのように、窓を開けようとする。

もちろん、鍵をかけているから窓が開くことはない。
けれど千歳は椅子から立ち上がって後退していた。
今の……嘘でしょ?

ゾンビたちはドアや窓を開けることはできない。
それだけの知能は持っていない。
それが今、覆された瞬間だった……。