明宏もカオリも机から動けずにいる。
もう2年A組はテストどころではなくなっていた。
せっかく勉強してきたところが出てきて喜んでいたけれど、それも無駄に終わるだろう。

「おい、なにしてんだよお前!」
教室後方で必死に男子生徒を止めている。
女子生徒から無理やり引き離された男子生徒の口元は真っ赤に染まり、首の端からなにかが垂れ下がっているのが見えた。

それはまるで無理やり引きちぎられた生肉のようで……。
「食われてる!!」
男子生徒を引き剥がした子が悲鳴を上げた。
「こいつ、クラスメートのこと食いやがった!」

その言葉に咄嗟に立ち上がった千歳の視界に床に倒れている女子生徒の姿が見えた。
首から血を流しているようで、そこには噛み切られたような傷痕がある。

首の肉を引きちぎって食べた……?
まるで現実味のない出来事なのに、突如吐き気がこみ上げてきてトイレに入った。