「ほとんどのゾンビがそれで感染してます。今は街中がゾンビだらけです」
明宏は説明しながらテレビをつけた。

あいかわらず、この街のことばかりが報道されている。
徘徊するゾンビたちの姿に先生は息を飲んで画面に見入った。

「今、どれくらいの人たちが残っているの?」
「それはわからないです。もしかしたらもう、俺たちだけかも……」

それは一番考えたくないことだった。
だけど可能性は十分にある。
時々ニュースやネットに上げられた動画を見ていると、まともな生存者の姿はほとんどないことがわかる。

「でも、キスで人間に戻るなら問題なんじゃない?」
脳天気な声で言ったのは育美だ。
育美は机に座って長い足を組んでいる。

「感染者全員にキスをして回るのは難しいけど、自分たちの進路を確保することはできるかもしれないわね」
先生は同意を示した。