「強い者が勝つのはどこの世界でも同じでしょ」
育美が平然と言ってのける。
自分は強い者だと思っているから、常にこの態度を貫くことができるんだろう。

こんな人と本気で会話をしていても成り立たない。
人の気持ちや意見を聞く姿勢にないからだ。
それよりも教室から出て随分と時間が経ってしまった。

そろそろ戻らないと心配をかけてしまう。
「とにかく教室に……」

そう言って振り向いたときだった。
そこに倒れていたはずの先生が立っていた。
先生は困惑した表情で周囲を見回し、右手で乱れた髪の毛を整えようとしている。

顔色はいいし、皮膚もただれていない。
その姿に千歳は呆然としてしまった。
「私、どうしてこんなところにいるのかしら? 白衣もすごく汚れてるし」

鏡の中の自分の姿を見て先生は顔をしかめている。