その時、横向きになった先生の顔が間近に見えた。
ただれた肌に青い白い顔。
目はキツク閉じられているけれど、今にもカッと見開いて千歳に襲いかかってきそうだ。

もう少しで指が全部離れる。
そう思ったときだった。
突然後ろから頭を掴まれて、気がつけば眼前に先生の顔があった。

寸前のところで力を込めて止める。
「なにするの!?」
千歳の頭を掴んで先生の顔に押し当てようとしたのは育美だ。

育美の力は想像以上に強くて抵抗が難しい。
「キスしてみてって言ってるんだけど? 私のいうことが聞けない?」
「なんで私が……あんたの言うこと聞かなきゃいけないの!」

必死に反論するけれど、口から空気が抜けるたびに力が抜けていくようだ。
千歳の顔はグイグイと先生の顔に近づいてくる。
今このタイミングで先生が目を開ければ、千歳は一番に襲われる。