「だから、最初からそう言ってるんだけど?」
育美が腕組みをして千歳を見つめる。

千歳は前髪をかきあげて顔をしかめた。
「本気でキスしてほしいと思ってるの?」
「当たり前でしょ。ゾンビが人間に戻るなら、学校からだって、街からだって脱出できるんだから」

「それなら自分がやればいいでしょ?」
もう育美のワガママには付き合っていられない。
ゾンビにキスをしろなんてめちゃくちゃだ。

「無理だよ。だって私キスの経験がないもん」
育美の言葉に千歳は目を大きく見開いた。

同時に夜中に杉川を誘惑していた様子も思い出す。
「嘘はやめて。キスしたことないくせに男子生徒を誘惑したの?」

「いつ死ぬかわからないから、それなら杉川にって思ったんだよ。結構カッコイイし、処女のまま死にたくないから」