先生はその場で何度か足踏みをして前に進もうとしたが、そのまま倒れ込んでしまった。
それでも手を伸ばして千歳の足首をつかもうとする。

千歳はもう1度先生の頭部へモップを振り下ろすと、先生はもう動かなくなっていた。
千歳は肩で呼吸を繰り返して先生を見下ろす。

もう起き上がってくるような気配はないけれど、完全に死んでしまったとは思えない。
きっと時間が経てばまた徘徊を始めるんだろう。
そうなる前に教室へ戻らないと。

そう思ったとき、ようやく育美が個室から出てきた。
「先生だったんだ?」

倒れている先生を見て育美が言う。
千歳はそんな育美を睨みつけた。
「トイレについてきてあげたのに、なんで手助けしてくれないの?」

思わず不満が爆発する。
千歳1人でもどうにかなかったからいいものの、襲われていた可能性だってあるんだ。
それでも育美は笑っていた。

「だって、ふたりともが襲われたら意味ないじゃん」