廊下にいたのはゾンビだった。
一瞬しか見えなかったけれど、白衣を着ていたから保健室の先生だ。

いつも清潔感のある長い黒髪はボサボサに乱れてよごれが付着していた。
「ねぇ、ドアを開けたの? 誰がいたの?」
育美の声が聞こえてきても返事はしなかった。

ゾンビがいると伝えてもどうせ手助けをする気なんてないはずだ。
千歳はまた大きく息を吸い込むとドアを少し開いた。

やっぱり、保険の先生で間違いなさそうだ。
先生はドアに向かって歩いてきて、ぶつかってを繰り返している。
他のゾンビたちはちゃんと方向転換しているのに、先生はそれがうまくいかないみたいだ。

きっと、四条姉妹が立てている音に反応しているはずなのに、そこまで行き着くことができない。