あの子たちも、いつまでも音を立てて居られるわけじゃない。
椅子で音を立てつつ、ゾンビが襲ってきたときにはそっちの対応もしているはずだから。

本当に、こんなところでのんびりしている暇なんてない。
緊張から呼吸が浅くなってきた。
千歳は意識的に空気を大きく吸い込んで自分を落ち着かせる。

と、そのときだった。
ガンッ! とまたドアが叩かれたのだ。

千歳は身を引いて身構える。
ガンガンとドアは叩かれ続けている。
千歳はごくりと唾を飲み込んでドアノブに手をかけた。

丸い形状の古いドアノブを回して外向きのドアをそっと開ける。
その隙間から見えた顔は青白く、皮膚がただれていた。

「ひっ!」
千歳は小さく悲鳴を上げて咄嗟にドアを閉めていた。
心臓が早鐘を打っている。