それなのに手を貸すつもりはないのだ。
だから個室からなかなか出てこないのだと、千歳はよやく理解した。

「出てきてよ! 私1人じゃ無理だって!」
「大丈夫だよ。だってモップで攻撃するだけでいいんでしょ? できるよきっと」

それなら育美がやればいいじゃない!!
そう叫んでしまいそうになるのをどうにか喉の奥に押し込めて深呼吸をする。

今ここで頭に血が登ってしまえば冷静な判断ができなくなる。
学校内にはゾンビがうようよしているのだから、冷静でいなきゃいけない。

ブツブツと口の中だけで呟いて自分に言い聞かせる。
育美とはこれ以上会話はしない。

離せば話すほど腹が立って、冷静ではいられなくなるからだ。
千歳は右手でモップを持ってドアに近づいた。
まずは耳を押し当てて廊下の様子を探る。

少し離れた場所からガンガンと聞こえてくる音は、四条姉妹がまだ音を立ててくれているからだ。