自分たちしかいないのなら、どうにかしてここを脱出しないと助けは来ない。
「ねぇ、トイレに行きたいんだけど」
若葉とふたりで深刻な話をしているときでも、育美は至って自分中心な行動をする。

ムスッとした表情を浮かべてふたりの前に立った。
「行ってきたら?」

千歳が言うと、育美が「1人で行けるわけないじゃん」と、唇を尖らせる。
ついてきてほしいのならそう言えばいいのに、人にお願いをスすることはプライドが許さないらしい。

千歳はため息交じりに立ち上がった。
「わかったよ、ついて行ってあげる」

そう言わないと納得しそうにないからだ。
「そ」
育美はありがとうも言わずにそっけない。

「他にトイレに行きた人は?」
どうせだからまとめて行っておいた方がいいと思って千歳は声をかける。
誰も返事をしなかった。