そこにいたのは血色のいい女の子の姿だった。
少女はまばたきを繰り返して『陸くん?』と、配信者の名前を呼んでいる。

千歳たちは画面に釘づけになっていた。
さっきまで青ざめてただれた皮膚を持っていた少女が、今は生き生きとしているのだ。

それは感染者とは言えない様子だった。
『キスをすることで元に戻るんです! 人間に、戻るんです!』

配信者が興奮気味に叫ぶ。
『僕は最初、感染してしまった彼女と一緒に死のうと思いました。だから最後に軽くキスをしたんです。そしたら……人間に戻ったんだ!』

最後の方は敬語も忘れていた。

『感染してもキスをすれば人間に戻る。どうしてかはわからないけど、もしも苦しんでいるなら試してみてください。もちろん危険を伴う行為だし、これには1つ欠点もあって……』

まくしたてるように言っていた配信者の声が急に静になる。
なにかを確認するようにカメラをあちこちに動かしている。