ゾンビが音に反応することを知っているみたいだ。
配信者は用心深く家に入るとホッと息を吐き出して鍵を閉めた。

そのときにナイロン袋を片手に持っているのが見える。
中身はきっと食料なんだろう。

『あ、この家は知らない人の家です。逃げてきたときに偶然見つけて入らせてもらいました。家の人たちはもう逃げたあとで、誰もいませんでした』

説明しながら廊下を進み、左手にあるドアを開けた。
そこはリビングダイニングになっているようで、広いフローリングが広がっていた。

『この子が、彼女です』
配信者が白ソファへカメラを向けた時、そこにロープで縛られた少女が横倒しになっているのが見えて千歳は思わず息を飲んだ。

少女は千歳たちと同年代に見えるが、顔色は悪くて皮膚はただれている。
ゾンビ化しているのがひと目で変わった。

少女は配信者が戻ってきたのを見て低い唸り声を上げ、牙をむき出しにする。
縛り付けていなければ暴れだしてしまうんだろう。
だけどその様子はとても痛々しくて見ていられなかった。