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「今なにか聞こえた?」
2年A組の教室で千歳はなにか聞こえた気がしてドアへ視線を向けた。
「何のこと?」

あと数分で始まる数学のテストに向けて教科書を見ていたカオリが顔をあげて聞き返してきた。
「なにか、悲鳴みたいな声が聞こえた気がしたんだけど」
周囲を見回してみるけれど、その声に気がついた生徒はいないみたいだ。

自分の勘違いだろうか?
千歳は首をかしげてカオリを見る。
「私には聞こえなかったよ。それより数式を覚えなきゃ」

と、また教科書に視線を戻す。
気の所為、だったのかな?
それにしては千歳の耳にはいつまでもさっきの声が聞こえてきて、胸に支えていたのだった。