桜堂ホテル・ゴールドコースト。
 その最上階にあるデラックススイートからは、ゴールドコーストの海が一望できた。

 もうすぐ、海に夕日が沈む。
 それを、窓辺に寄り添って、ただ二人で眺める。

 悠賀様とならと思っていたけれど、いざ目の前にするとやっぱり悲しい気持ちは拭えない。
 大好きだった父も母も、この世にはいないという現実を突きつけられるから。

「 ♪you and me, you and me,
   sunset over the sea~  」

 はっとした。
 懐かしいその曲を紡ぐのは、悠賀様の口だ。

「その歌……」

「不思議だよね。こんな簡単な歌詞なのに、ずっと、忘れられなかったんだ」

 悠賀様はそう言うと、くすりと笑って私の手を取った。
 きゅっと繋がれた右手を、私も握り返した。

「 ♪あなたと、ふたり、沈む夕日~ 」

「そ、それは……!」

 それは、私が父の歌に勝手につけた日本語の歌詞。
 急に慌てる私に、悠賀様はクスクスと笑った。

「依恋が日本人の僕のために、作ってくれた歌詞だよね」