しかしそんな気持ちとは裏腹に、パーティーは進んでいく。
 やがて優雅な生演奏のバンドが、しっとりとした曲調に変わった。

「ダンスタイムだ」

 悠賀様はそう言うと、私の腰に回していた手を外す。

 ――さすがに、ダンスはね。

 そう思っていると、悠賀様は不意に私の右手をとる。
 それから、目の前にひざまずき、こちらを見上げた。

「僕と一曲踊っていただけますか、レディ」

 突然のお誘いに、胸がときめく。
 ドキドキと鼓動が頭まで響いてきて、息が止まりそうになる。

「どこの令嬢でしょうね」

「悠賀様にファーストダンスを申し込まれるなんて……」

 そんな声が聞こえて、我に返る。
 慌てて悠賀様に取られた手を引っ込めた。

「わ、私、ダンスなんて踊ったことありませんので!」

 逃げてしまいたい。恥ずかしい。それに、何より。

 ――こんな私とダンスだなんて、悠賀様が恥をかいてしまうに決まってる!

「うーん、どうしよう。僕には踊らないという選択肢も、君を手放すという選択肢もできないんだけど?」

 いたずらな笑みを向けられ、もう一度手を取られた。
 ズルい。そんな訊ね方をされたら、踊るしか選択肢がなくなってしまう。

「大丈夫、僕に身を預けてくれればそれでいい」

 悠賀様はそう言って、私を立たせる。
 そのままホールの中央まで誘うと、私の腰を抱き寄せた。