「悠賀様、いつもお世話になっております」

「ああ」

「悠賀様、これからも御贔屓(ひいき)に」

「こちらこそ」

 さすが悠賀様だ。
 パーティー会場に入った瞬間から、ひっきりなしに人が集まってくる。
 それを全て爽やかな笑みと巧みな会話で交わしていく。
 名家の御曹司ともなると、いつもこんな風なのかもしれない。

 同時に、あれ、と思う。
 誰も私の存在について、言及してこないのだ。
 悠賀様のパートナーなのに。

 それどころか。

「依恋さん、疲れてはいないかい?」

「は、はい、大丈夫です」

 悠賀様は私のそばを離れることなく、ずっとそばでエスコートしてくれる。
 飲み物が無くなればグラスをすぐに交換してくれるし、疲れていないか、座ろうかなど気にかけてくれる様はやはり王子様然としている。

 ――立花家の私が、こんなに楽しんでいいのかな。

「あの……」

 ドリンクを差し出したところで、耐えられず口を開いた。

「悠賀様は、どうして私をパーティーなんかに……?」

 悠賀様の気持ちが分からない。だったら、直接聞いてしまえばいい。
 けれど、それは失敗に終わる。

「急で驚いただろう。でも、僕はずっと君を探していたんだよ」

「ずっと……」

 思わず口に出てしまった。
 ずっと探していたのは、もしかしたら私が『立花』だからかもしれない。

 ――やっぱり私は、疑われている。

 これから何が起こるのだろう。
 私はどうなってしまうのだろう。
 そう思っていると、悠賀様が口を開いた。

「君は愛されるべき存在なんだよ」

 愛――とは。
 悠賀様の気持ちが、やはり分からない。
 彼は私の味方なのか、敵なのか。

 同時に思うこともある。
 この幸せは、不幸の前触れなのかもしれない、と。