デュベカバーからデュベを抜き、ピローケースからピローを抜く。
 デュベを裏返した時にほんのりと匂った柑橘のような爽やかな香りは、悠賀様のものだろうか。

 それにしても、広いベッドだ。
 これはおそらく、桜堂ホテル・トウキョウのグランドロイヤルスイートと同じキングサイズ。
 けれど客室と異なり、ピローが二つにボルスタークッションがひとつしかない。
 だから余計に、ベッドの大きさが際立つ。
 
 シングルべッドなら斜め下に引っ張るだけで抜けるシーツも、いちいち頭側と足元側に回らなくては抜けなかった。

 客室なら他のメイドさんと二人一組でベッドメイキングできるけれど、今は私だけ。
 なんとかベッドをマットレスだけにして、リネン類をまとめる。
 
 するとガチャリと寝室の扉が開く。
 ビクビクとしながら振り返ると、新品のリネンを持った執事さんがいた。
 
「あ、ありがとうございます……」

 お礼を伝えリネンを受け取る。
 すると執事さんは口角を上げ一礼し、私がまとめたリネンをひょいと持ち上げた。

「あ、あの、それ――」

 他の人に持ってもらうことになるなんて、考えもしなかった。
 だから、適当にまとめ上げていた。ぐしゃぐしゃだ。

 けれど執事さんは何でもないように、使用済みリネンをしゅるしゅるっと手の上でまとめあげ、一つの塊にした。
 それからこちらに向き直り、目尻を下げた。

「何のこれしき。このお部屋は、長らく私が清掃を担当しておりましたので」