バタンと扉がしまり、へなへなとその場に座り込んでしまった。
 どうやら相当気を張っていたらしい。
 はぁ、とため息をこぼして、二、三度、まばたきをした。

 悠賀様は私が立花家の人間であることに、おそらく気づいている。
 これは実質、桜堂家による幽閉だ。
 もし私が立花家の人間である裏を取れたなら、悠賀様は私をどうするか――。

 悠賀様は、あの笑顔の裏側で何を考えているのだろう。
 ぶるりと身が震えた。

 55階のこの部屋は、暖房もついているのに、初冬の冷たい外の空気がまとわりつくようだ。

 ――考えていても仕方ない。

 私にできることは、ただ言いつけられた清掃をすることだけだ。
 
 もしお掃除で認めてもらえれば、お仕事のことと家のことを分けて考えていただけるかもしれない。
 そうなれば、立花家の人間であっても、ここで働き続けることができるかもしれない。

「よし」

 私はぺちぺちと両頬を叩いて気合を入れると、まずはベッドメイキングをしようと悠賀様の出てきた部屋へ向かった。