このまま、ずっと見つめることができたらいいのに。


「彼女さん着きましたよ。」



タクシーの運転手さんに声をかけられて、外を見ると、大きいマンションの目の前だった。



…こんな大きなところに住んでるんだ。さすが瀧課長。




「あ、私彼女じゃないんです。…部下です。」




「あら、そうだったのかい。彼があまりにも気持ちよさそうに寝てるからてっきりカップルかと思ったよ。」



『ごめんねえ』と微笑みながら謝る運転手さんに、顔が熱くなっていく




「瀧課長、おきてくださいっ」



控えめに腕を掴んでゆらゆらと揺らして様子を見てみる。




すると、案外あっさりと目を開けて、



とろんとした目覚めたての瞳のままで、



私の手を大切そうに腫れ物に触るよう丁寧に掬い上げて、




「…この子、俺の好きな子、」




チュッーーー



憂を帯びた揺れた目で私を捕らえながら、私の手の甲に口付けを落とした。