戸惑いながら、タクシーに乗り込むと瀧課長の家の住所まで運転手さんに伝え済だったらしく、すぐ発車してくれた。


…住所まで伝えるんだったらそのまま自分が送ればいいのにさ。



隣を見ると、すやすやと気持ちよさそうに眠っている瀧課長の姿。




…いつも完璧なのに、寝顔はこんなにあどけないんだ。



瀧課長の寝顔を独り占めできるなんて、…ちょっと嬉しい。


これは、時藤に感謝かも…



とりあえず、家まで送って私も帰ろう。



なんかどうしたらいいか分からなくて、窓の外に目を逸らして流れる夜景を見る。



「ん…」




「っ、」



突然肩に感じる重みと、シャンプーの爽やかな匂い。



見ると瀧課長が私にもたれかかっていた。




心臓が激しく踊り出す。




ど、どうしよう。こんな近い距離、初めてっ。




長いまつ毛がきめ細やかな肌に影を作って、流れる街の灯りに照らされる。



その綺麗な儚さに息を呑んでしまう。



…かっこいい。