「いやっ、苦手なら飲まなくていいから」




「いや、飲みます!」


ムキになって、ブラックコーヒーのペットボトルを開けようとする。



「本当に、大丈夫だからっ」




「っ、」



必死の思いで止めに入る。



一瞬自分が何をしているか理解が追いつかなかった。


あろうことか小さくて、白い彼女の手を握ってしまっていた。


ぼっと顔が真っ赤になるのがわかった。




「あ!!ごめん!つい!」


慌てて手を離すが、しっかり握ってしまった感触が残る。




「あ!いえ、全然気にしないでください!」



少し恥ずかしそうに上目遣いをしながら微笑む彼女に、倒れそうになる。



気を確かに持つんだ俺!



なんとかスマートな上司を演じないと嫌われる!




「…だからえっとあの俺が飲むから。」



そう言って、手からペットボトルを奪い、一気に飲み干した。



うげっ、苦い。やっぱりブラックコーヒーは嫌いだ。


確実に家に帰って眠れなくなるだろうし、今すぐ甘いものが飲みたい。