「それはそうと。お父上に宣言した以上、わたくしは貴女のことを小指の先ほども不幸にすることが許されないわけですが」




しばらくして、飲み終わったミルクティーのカップを下げた鷹司は、何か縦長の箱を片手に戻ってきた。




「今日は手始めに、贈り物でまい様のご機嫌を取ろうと思います」


「これは?」


「以前お渡しした香水瓶に入れるための香水です。中身がないと文句を言ってらしたでしょう」




渡された小箱を開けてみると、液体で満たされた試験管に似た容器が入っていた。瓶に詰め替えることを想定しているためシンプルな形なのだろう。

鷹司はそれをそっと取り出し、「失礼いたします」と言って私の手首に香水を付けた。

匂いを確かめて、私は思わず声を上げた。




「この香り……!」


「まい様はムスク系の香りが好きだとおっしゃっていましたが……わたくしの勘違いでなければ、お好きなのはムスク系全般ではなく、わたくしが愛用しているこの香水でしょう?」


「っ……」