何を言っているのかわからない。

眉をひそめると、鷹司はソファーの隣に腰を下ろしながら苦笑した。




「考えてもみてください。貴女はあの岸井社長の娘なのですよ? 岸井家との関係を望む者なんて掃いて捨てるほどいます。それなのに雄一様以外に婚約者候補がいないこと、違和感を覚えませんでしたか?」


「そんなの、こんな可愛げがない上に教養もない私を嫁に望む物好きがいなかったからでしょう?」


「いいえ。貴女を妻にと望んだ者は皆、旦那様のお眼鏡に叶わず、貴女に紹介されることすらなく突っぱねられてきたのですよ」


「え?」


「旦那様は決して口には出しませんでしたが、家柄以上に人柄を見て、まい様が幸せになれるようなお相手を探していらっしゃいました。旦那様にとって唯一合格ラインだったのが御園雄一様だったのです」


「何よそれ……」




言葉を失った。


そんなわけない。

お父様は、私のことを金のかかる所有物ぐらいにしか思っていなかったはずだ。

私のことをさんざん無能呼ばわりして、厄介者扱いしてきた。