「頬の腫れはちゃんと引いてるわね。良かった」




お父様に平手打ちされた直後、鷹司の白い肌は痛々しく赤色に染まっていたけれど、今はもう少しも痕が残っていない。それがわかってほっと息をついた。




「もう何日も経ちますからね。どうぞ、ミルクティーをお持ちしました」


「ありがとう。またほうじ茶? 案外美味しかったのよねあれも」


「今回は紅茶です」




鷹司が執事を辞めてから、こいつはお茶を淹れる腕前も一級品だったのだと知った。

一口飲むと自然と口元が緩む。やっぱり一番美味しい。




「それにしても……お父様、貴方のことすごく気に入っていたはずなのに。あそこまで拒否するなんて、私が御園さんとの婚約を駄目にしたのがよっぽど気に食わなかったのね」


「……まい様、まさかまだ気付いていらっしゃらないのですか?」


「何が?」


「お父上は、貴女のことを心から大切に思っておられるのですよ」


「は?」


「まあ要するに、まい様の素直になれない性格はお父様譲りなのでしょう」