かつて、鷹司を私の専属執事にしたのだと得意げに語っていたのと同じ人だとは思えなかった。

鷹司を殴ったことと、あとは自分が馬鹿呼ばわりされたことに腹が立って、私はお父様のことを睨みつけながら言い返そうと一歩進み出た。

……けれど、それは鷹司に制されてしまった。




『旦那様がお嬢様のことをいかに大切に思ってらっしゃるかは承知しております』


『適当なことを……』


『わたくしがもし、ほんの小指の先ほどでもまい様を不幸にしたと思われたのなら、その時はどうぞ容赦なく引き離してください。ですから……少しだけ、チャンスを頂きたいのです』




鷹司はそう言って、深々とお父様に頭を下げた。

お父様はそれに対しても色々と厳しい言葉を浴びせていたけれど、鷹司は一切怯む様子を見せなかった。

それがわかると、やがて根負けしたように『勝手にしろ』と言って私たちを部屋から追い出したのだった。